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親ごころ

小学生の頃、ピアノを習っていました。
母親の願いで行かされていたため、あまりまじめな生徒ではなく、よくさぼって教室の近くにある高校のグランドで野球部の練習を見ていたことを覚えています。

教室は電車で20分ほどのとなり町にありました。
ある日の練習後、どこかに財布を無くしてしまい、電車で帰れなくなったことがありました。駅から教室までの間に落としたのか、どこを探しても見つかりません。たまらず教室から家へ電話をかけると、タイミングが悪く父が出ました。

タイミングが悪いというのは、うちの父はとても厳しかったからです。
中学生になってからも父と目を合わすことが出来ないほどに怖い存在でした。

“財布を無くしたので迎えに来て欲しい”ということを伝えると、案の定、一喝されてから、“無くしたのは自分の責任、歩いて帰って来い”と返答がありました。歩いて帰ると2時間ほどでしょうか。その時の自分の気持ちは記憶にありませんが、とにかく、歩いて家へ向かいました。テクテク歩く道中をどことなく覚えています。

半分ほど来た頃に、ふと後ろを振り返ると、平行して並ぶ道にいる車に気付きました。止まっているようにも見えるその車は歩くほどのスピードでトロトロ走っています。少し気にかけながらも、再び歩き出しました。しばらくして、また後ろを振り返ると、だいぶ離れたところで一定の距離を保ちつつその車がいました。今で言うなら、まるでストーカーのように、ずっとぼくをついてきているようでした。そして、何度かそれを繰り返しているうちに、その車がうちの車であることに気付きました。子供心に「何してんの?」「いるんなら乗せてよ!」と思ったに違いありませんが、父のもとへこちらからおずおずと行けるわけもなく、結局そのまま歩いて帰り着きました。
家へ帰ってからも、その話題は一切出ませんでした。


こんな他愛もない話ですが、今でもふと思い出すことがあります。
ぼくにもいつか子が恵まれ、子が似たような失敗をした時、おそらく父と同じ対応をするのかもしれません。

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