「足ることを知らば貧といえども富と名づくべし。 財ありとも欲多ければこれを貧と名づく。 」
これは、源信和尚(僧都)と呼ばれた、平安時代のお坊さんの言葉です。
意味は、ほぼ言葉のまま、真に富むということは、財産をたくさん持つ事ではなく、足る事を知ることにある、ということ。
ではなぜ、財産があることよりも、足る事を知る方が「富む」と言えるのでしょう?
この場合の「富む」というのは、物理的なものではなく、心の豊かさ、とでも言いますか、精神的な充足の事を指すと考えられます。
物理的な富、というのは、どれだけ得ても、もっと欲しい、もっと欲しいと、際限の無いものです。仮に今、100万円が手に入ったとしましょう。おそらく、それを使ってそれなりの満足は得る事ができるかもしれません。しかし、それも一瞬のもの。そのお金が減っていけば、また欲しくなるに違いありません。それは額が小さいから?いやいや、100万円だろうと、1億円だろうと、おそらく同じです。
そのような富では、心から満足を覚えることはできません。砂漠で水を飲むようなもので、いくら水を飲んでも、またすぐに渇きを覚えてしまいます。
では、「足るを知る」ということは、どういうことなのでしょう?
100万円を得て、ひととき満足する事と、「足るを知る」というのには、どこに違いがあるのか。
これは、感謝、ということと、深く結びついているのではないかな、と思います。
日本語で感謝を表す言葉といえば、「ありがとう」ですよね。
この「ありがとう」と言う言葉は、「有り難し」から来ています。
つまり、「有る」ことが「難しい」こと、滅多にない、珍しくて貴重である様を表す言葉から来ているという事です。
いやいや、100万円が手に入る事だって、滅多にないし、珍しい事だし、もしそう言うことがあれば、感謝するに決まってる、と反論されるかもしれませんが、確かに、手に入る事は滅多にないでしょう。
しかし、手に入ってしまった瞬間、その100万円は、自分の所有として、当たり前の物になってしまいます。或いは、労働の対価として手に入れれば、もらう事すら当然と思うでしょう。
その当たり前になった瞬間、感謝の気持ちは薄れてしまいます。そうすると、次に起こってくるのは、もっと欲しいという、新たな欲望ではないでしょうか。
そうしますと、「足るを知る」ということは、物事が今「有る・在る」ことを、決して当たり前の事と思うのではなく、「有り難い」ことであると受け取っていく事にあるのではないでしょうか。
私たちは、物があること、物を食べる事、健康である事、生きている事、それらをどこかで「当たり前」と考えています。だから、それらを失った時、大いに苦しむのです。
しかし、紙切れ一枚であっても、「有る・在る」ということは、「当たり前」などではありません。木の命、紙を作る人たち、それを運ぶ人などなど、いろんな力が働いて初めて、「有る・在る」のですから。
それは、私たちの命も同じです。いろんな命の働き、目に見えない繋がりが重なり合って初めてあるもの。つまり、私が今ここで息をしているのは「有り難い」ことであり、逆に言えば、いつその息が止まっても、おかしくは無い身である、ということなのです。
当たり前と思う事、当たり前すぎて当たり前とも感じない事、それらに目を向けて、「ああ、当たり前ではなかったな、有り難いことであったな」と受け取り、喜べる事。それが真の感謝の気持ちであり、「足るを知る」ということ、つまりは本当の「富み」なのかもしれません。
しかし、その感謝の対象はあまりに大きくて、いくら感謝しても、しきれるものではありません。そうだとしても、一生をかけて、感謝をしていくことが大切なのではないでしょうか。一生をかけて感謝をしていくという事は、一生をかけて喜びを味わっていく、ということでもありますからね。
物が「有る」こと、手に入る事が当たり前、物が「有る」こと、価値あるものを手に入れるのがすばらしい事、「富み」であるとされがちな現代。
しかし、温暖化などの地球環境の悪化から、エコ、ということも大いに叫ばれるようになりました。
このエコも、素晴らしいことでありますが、地球環境のため、あるいは限りある資源維持のため、だけではなく、資源が「有る」こと、今自分が使う事ができる事を、当たり前の事ではない事を思い、感謝の気持ちを持って行なっていけると、より良いかもしれませんね。
最近は古紙を偽装すると言う、エコ偽装なんて事も出てきましたし…エコを餌に自己の利益ばかり追求するのは、なんとも残念な話です…
おっと、最後はちょっと話が逸れました。人の事を言うのではなく、まずは自分の生き方から、ですよね。
コメント (1)
昨日はお会いできて色々話せて楽しかったです。
最近ちょっと思うのですが、幸せな生活の中に「ありがとう」というのではなくて、「ありがとう」という中に幸せがあるような気がするんですよ。
投稿者: ちすい | 2008年01月30日 12:57
日時: 2008年01月30日 12:57