なされたことを知る
- 2010年03月11日(木) 文:チスイ
- 仏声人語
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最近「恩」という言葉が使われにくくなってきたらしい。インドでは「クリター」とか「カタンニュー」という言葉で「なされたことを知る」という意味がある。僕も含め現代人は「なされたことを知る」感性が鈍ってきているのかもしれない。
最近テレビに齧りついたのは、バンクーバーオリンピックだ。
色々な競技を見て興奮し、たくさんの感動をもらった。競技一つ一つ、選手一人一人にドラマがあった。
特に注目したのはフィギュアスケートで、女子はもちろん浅田真央ちゃんとキムヨナの金メダル争いに注目した。どちらも素晴らしい演技で、金メダルはキムヨナ選手だったが、「真央はもう一人の私」という言葉には、御縁を感じずにはいられなかった。
メディアは同時代に2人の天才が出たということは悲劇と言うが、そうではないと思う。
お互いがお互いを意識し、影響しあい、刺激し合ってより高みを目指す。それによってあれだけの素晴らしい演技が生まれたのだと思う。
また、男子フィギュアも盛り上がった。
男子では初めての銅メダルを高橋大輔選手が獲得したのだ。
高橋大輔選手は岡山県の出身だ。僕は岡山県の生まれなので身近に感じていたのだが、正直、雪の少ない岡山で珍しいなくらいに最初思っていた。しかし、オリンピックのスケーティングを見て驚いた!
何が凄いって、まず、難易度の高い4回転に果敢に挑戦したこと。そして、それに失敗してもそこでめげずにそこからのステップが物凄いのっていたことだ。
テレビでこのような秘話が放送されていた。
高橋選手は子どもの頃、地元の倉敷のスケートリンクで練習をしていた。その頃から才能溢れる選手だったらしい。
練習後、高橋選手と高橋選手のお父さんは、スケートリンクに残り、用務員のおじさんがスケートリンクを掃除される様子を眺めていたという。テレビで用務員さんがコメントをされていたのだ。
スケートリンクを丁寧に機械で掃除し、真平らにされている用務員さんの姿を見る高橋選手に、お父さんはこう言われたのかもしれないと想像する。
「大輔、よく見ておけよ。おまえは一人でスケートしているんじゃないんだぞ。おまえが滑ることができるのは、おまえの見ていないところで、こうして一生懸命にリンクの整備をして下さるかたがいらっしゃるからだぞ」と。
「家族をはじめ、応援してくれた全ての方に感謝したい」
涙ぐみながら、しかし、素晴らしい笑顔で高橋大輔選手は銀メダル獲得後、インタビューにそう答えられたのが、とても印象的だった。
春、3月。卒業シーズン。
「仰げば尊し、我が師の恩」という歌もある。
自分がなしたことよりも、遥かに多くのことが、自分になされている。
そのことに気付いた時、ひとりじゃないという勇気と、感謝の中で、精一杯生きていける。
僕も4月から、京都を離れ新生活がスタートする。
なされたことに感謝しつつ、やりたいことがいっぱいある。
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