Good Luckに気をつけて。

 メンバーのとしさんの代理で書かせていただく。久しぶりの投稿だ。
昨年の暮れ、ラオス人民共和国に一人旅に出かけた。何かに追われるようにショートしてしまった体を癒したい、アスファルトの無い世界に行きたい、そんな気持ちで訪れたラオスは、二度目の訪問である。


■ラオス人民共和国は東南アジアの国


ラオスに行ってきたと言ったら「ラオスってドコよ?」か「ラオスってテロであぶないところでしょ?」という返答が多数なくらい無名である。この国は東南アジアに位置し、いわゆるインドシナ半島の海に面していない内陸の国。内陸といってもメコン川に沿って国があるので、自然豊かな国である。農業が主、というよりは産業が発達していないと言った方が良いか。何かと不便だろうなと思いつつも、滞在中は不便さを感じなかったのはなぜだろう。


数百円程度のゲストハウスにはアメニティなる言葉すらも存在せず、パイロットの気まぐれか、飛行機は飛ばないことも決して少なくない。何にせよ、この国はゆったりと流れる時間がある。ゆったりといえばインドが思い出されるが、インドとは違う何かがこの国にはある。なんと表現したら良いか分からないが、あえて言うならば「気品溢れる国」なのだ。


決して、ブランド服や高級住宅でマナーが云々という話ではない。舗装とは言えない道路、建物はお世辞にも立派なものとは言いがたい。そんなことではなく、お国柄を感じる服装と観光地には定番の物乞いや、しつこい押し売りもなく、道ですれ違えば、「Sabai Dee(こんにちは)」と声がかかる。やや、欧米人好みに町づくりをしてしまった場所もなくはないが、ここの人々は自然で且つスマートな生き方をしているように見える。


■パクセからチャムパーサックへ向かう


行程中、パクセ空港到着後、チャムパーサックに行きたいと思っていたのだが、バスターミナルはどっちに行けば良いかわからなく戸惑っていた時、ベンチに座っていた1人の若い男性が私に近づいて「どうしたのか」と聞いてきたので、これ幸いと思い、「チャムパーサックに行きたい」と頑張って伝えてみたら、バス乗り場まで連れて行ってやるからマイカーに乗れという。


話を聞くと、外国人向けの旅行店の仕事をやっているようだった。車に乗っていると、どこから来たのかというので、「ニープン(日本)」と答えると「コニチワー」と言ってくれた。私の顔が少しほころんだ。彼は、電子機器は日本製が大好きだと言う。日本について知りたいから色々と教えてくれというので、私は左手に持ったラオス語の本を参照しながら、できるだけ頑張って日本という国を説明してみるのだった。



■ラオスで悩む日本語


そんなやり取りを車中でしている時、こんな質問をされた。


「日本語で、GOOD LUCKはどういえば良いのか」


…私はかなり考え込んでしまった。そして思うのである。おそらく彼が代理店のような仕事をしている以上、日本人を相手にすることもあり、そんな日本人を見送る時には何と言えばよいのか?そういう思いの中で質問してきたのだろうと推測した。外国映画などの日本語字幕では「幸運を」「成功を祈る」程度のものなのだろうが、正直、普段の日本人の会話の中で、「幸運を」とか「成功を祈る」なんて表現は別れ際にはしないものだ。結局は


「日本語にそういう言葉はない。あえていうなら、”気をつけて”かな」


と答えた。”気をつける”なので、逆翻訳すればcareとかcarefulという単語に関わる言葉になりそうなのだが、別れ際にいう言葉ということに焦点を当てて、「ki,wo,tsu,ke,te」だ、と再度言った。彼は、難しい発音だなと言わんばかりに目的地までずっと「ki,wo,tsu,ke,te」を何度も繰り返していた。



■タラートダオファンで感じる


10分少々走ると車が泊まった。到着先は、市場であるタラートダオファンだった。え?バスターミナルじゃないの?と思ったのだが、彼が車を下りて着いてこいというので、埃と食料と人ごみにあふれる場所をかき分けながら進む。色んな人に聞いてまわるがみんな「あっちの方じゃないかなぁ」と言う。あっちに行けば、こっち、こっちに行けばあっち、なのである。少々探しまわるのにもくたびれ始めた頃、彼がやっとバスを見つけてくれた。…バスではなかった。日本語でトラックともいう。


「これに乗ってください」


私はそのトラックを見るや否や、ある種の感動を覚えてしまった。ウマそうなフランスパン…だけなら良い。ニワトリと、得体の知れない食料や生活物資がたくさん。中には何に使うか分からないその辺りに落ちているような廃材をたくさん持ったオバ様が乗っていた。しばらくすると、若いオランダの美女バックパッカー二人組が「シェアしてトラック乗りません?」というので「良いよ」といってそのトラックに乗り込むことにした。私がそのオランダ人と話していると、車で送ってくれた彼は、


「ki,wo,tsu,ke,te」


と、小さなカタコトの日本語を言って何事もなかったかのように足早に去っていった。お礼の一言も言えなかった。でもなんか自然な暖かさを感じた一瞬だった。彼らに取ってみれば当たり前の一瞬でも、私とっては出遇う事が難しいが、実際に出遇えた一瞬だと感じた。30分もするとトラックが出発した。


何か心に引っかかる。

そう「good luck」は「気をつけて」でよかったのか?いや、良かったと思いたい。運まかせの人生ではなく、無常の世界だからこそ「気をつけて」は日本の別れ言葉なのだと。

そう思いながら、トラックは未舗装の道路を南に向かうのだった。



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