君と僕とアミダ様の法話 愾管過去だった!』

時間というのは不思議なものです。見えるものではないので物差しで測れませんし、一日を24時間、一年を365日と仮に定めて僕たちは生活をしています。

子どもの一日と、大人になってからの一日はどう考えても長さが違うように思います。
また、自分の一日の中でも濃密に流れる時間と、あっさりと流れ去る時間と違うように思います。
主観的な時間は一定ではないのです。

作家の中島らもさんがエッセイで書かれていたのですが、僕たちが夜に見上げる星というのは、悠久の過去の星の姿を見ているのだそうです。
というのも、星の光が僕の目に届くには物凄く時間がかかるからです。

たとえば、これから夏の夜空に見える天の川という星の群れは、実は僕たちの住む地球を含む「銀河系」の姿です。太陽系は銀河系の端っこにあるのだそうです。この銀河の大きさはある説では、4万光年と言われています。これはつまり光の速さ(1秒間で地球を7周半)で、銀河系の一番遠い星の光が地球に届くまで、なんと4万光年もかかるということです。
しかし、それどころではなく、アンドロメダ星雲などは230万光年も離れています。これはアンドロメダ星雲の星の光は、230万年もかけて地球に届いているということで、寿命の短い星もありますから、今はもう滅びてしてしまっている星もあるのです。本当に途方もない果てしない話ですね。

身近かなところで言えば、テレビなどでは海外中継があります。海外からの声がスタジオに届くのにも少し時間がかかります。それと同じようなことが「見る」ということにも行われているのです。

たとえば、もう少し距離を縮めて、僕たちが太陽を見るということ、それは厳密にいえば今から8分前の太陽の姿なんです。それだけ太陽との距離があるということです。

ここで、中島らもさんはこのようなことを書かれていて、僕を驚かせました。
つまり、目の前にいる人であっても、少しだけ距離があれば、それは言わば一瞬過去のその人なのです、と。
吃驚です。仰天です。僕が見ている連れ合いや娘は、常に過去の連れ合いや、娘だったのです!
でも確かにそうで、友人も過去の友人の姿で、僕の見ている事象は全てが一瞬・一刹那過去の事象だったのでした。「ふーん、そう」と言われるかもしれませんが僕は、ショックで孤独感が増しました。

らもさんはこう言われます。「人間は刻々と変わっていきます。大切な人の想いも刻々と変わっていきます」と。完全に想う相手と同じ時間を過ごすためにはどうしたら良いのでしょうか?
それは、想う相手をいつまでも腕の中に抱きしめておくことです。
ピタリと寄り添って離れないことです。
そして、完全に、同じ瞬間、同じ場所を、「今・ここ」をともに生きて行くことです。

「私たちの腕は、思う相手をいつでも腕の中に抱きしめる為にあるのであって、決して遠くからサヨナラの手を振るためにあるのではない」と中島らもさんはエッセイでおっしゃいます。らもさんって、なんてロマンチストなんだろう。僕はあらためてらもさんのことを、素敵な恋愛小説家だと感じました。

しかし、残念ながら僕は、それは自分には不可能であると思います。
思う相手と常に一緒にいることは不可能です。なぜなら、自分と相手はどこまで近づいても、やはり一つにはなれないですから、一刹那タイムラグがあります。そして人間は、いや僕はどこまでも自己中心的な所があり、自分が可愛くて、ふと大切な人の手さえ、はなしてしまう瞬間があるのです。
そして、僕たちは誰しも必ず死を迎えなければならず、大切な人とずっと一緒に添い遂げることができないのです。

阿弥陀さまという仏さまは、まだ仏さまになられる前、菩薩だった時に、「いのち」と「ひかり」きわまりない仏様になろうと願い誓われました。
いのちが無限ということは時間的に絶対で、「いつでも」。ひかりが無限ということは空間的に絶対で、「どこでも」。そのような仏さまにならなければ、すべてのいのちの「今」「ここ」に届かない、救われないと見抜かれたのですね。

「いつでも」「どこでも」とは、つまり「今」「ここ」に生きる「私」のところで活動して下さっている、それが阿弥陀さまという仏さまだったのです。

僕は自分で自分を見ることはできません。なぜなら目は外を向いていますから。また自分の心は自分が思うほどコントロールできません。
そう考えると、自分よりも自分のいのちに近いところで活動して下さり、色んな大事なことを教えてくれたりするお方こそ、阿弥陀さまかもしれません。

僕の一瞬先にいる娘と、影踏み遊びをしながらそんなことを考えました。
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