最近、「業」ということについてよく考えます。
「業」というのは、行い、行為のこと。
行為は、必ずそれに影響力を伴います。
何かをすれば、必ずそれにともなって、結果が生み出されます。
例えば、宝くじを買えば、当たる・外れるという結果が生じます。
しかし私たちは、行為を行った時点で、その結果がどうなるかということはわかりません。
けれども逆に、結果から、自分の行った行為を振り返るということはできます。
私はその振り返って見えてくる、かつて行った自分の行為を「業」という言葉として捉えています。
 
ではなぜそんなことを考えるようになったのかと言いますと、今日本や世界の状況をニュースなどを通して見て、ああ、今この現状が起こっているのは、今よりも前にその原因を作り出しているんだな、ということを感じたからです。
例えば、未だ収束の兆しの見えない福島第一原発の事故と、それに伴う放射能汚染の問題もそうですし、ギリシャ危機、某光学機器メーカーの粉飾決算の問題、ステーキチェーンでのO157 の発生などなど、挙げればキリがありません。これらの事柄は、問題として表面化しているのは「今」ですが、その問題の原因は実は今よりも前につくられていたのでしょう。

そしてその問題が発生するに至った要因は、杜撰な安全管理だったり、危機意識の欠如だったり、なんとかなるさという楽観的な物の見方だったり、今さえ良ければ、自分さえ良ければという思いからきているのではないでしょうか。
原発事故に関して言えば、原発を利用して電力の安定供給や、電力会社の利益、あるいは交付金などの利益のことばかりを考えて、地震などの災害のリスクを低く見積もり、放射能汚染の危険を鑑みず、放射性物質の処理を今ではなく将来に負担させてきました。その言わば「ツケ」が、今の私たちのところに降りかかってきているわけです。
つまり、今の放射能汚染の問題は、まさにこれまでの国や電力会社の行為の「業」が招いた結果なのです。現在問題となっているその他の事柄についても、ほぼ同じようなことが言えるでしょう。

けれどもそれは、他人事では決してありません。自分の「今」も、これまでの私自身の行為、「業」によってもたらされたものですし、私のこれからは、私が今行っている行為によって決定されていくのです。
例えば、私は自分の体重がだんだんと増えてきていることが悩みの種です。でもこれって、食べたいだけ食べて、何かと理由をつけて運動することを怠ってきたという、自分の行為が招いた結果、なんですよね。今の私の体重は、まさに私の「業」によって問題化してきたのです。そして、私が今キチッとダイエットをはじめて、体重を落とすことを心がけていくようにすれば、将来的には体重も減るでしょう。けれども今のあり方を改善せずにいれば、もっと太っていくことは明白です。

仏教の基本的な考え方を表した言葉に「諸悪莫作 諸善奉行」という言葉があります。
「もろもろの悪をなくし、もろもろの善い行いをしていこう」ということですが、ここで言う「悪」とは、自分の欲望に負けてしまい、つい楽な方に流されてしまう心の弱さのことなのかもしれません。
もちろん、人を傷つけたり、犯罪を犯すようなことも「悪」です。けれどこれは、元を正せば、今さえ良ければ、自分さえ良ければという心の弱さからくるのではないでしょうか。
そしてその心の弱さに従ってしまった結果は、必ず「ツケ」として将来に影響して、大きな苦しみとなって我が身に降りかかります。「諸悪莫作 諸善奉行」という言葉は、今、楽な方に流されて行動してしまうと、後で大変なことになるのだから、楽な方に流されず、正しく行動しなさい、ということを教えてくれているのかもしれません。

もちろん、これから行う行為がどのような影響力をもって、どのような結果をもたらすかはわかりません。心の弱さに打ち克って努力したとしても、様々な外的要因によって、必ずしも良い結果に繋がるとは限りませんし、今現在、後悔しているようなことも、5年、10年後に振り返ると、あれで良かったのかもしれないと思えることもあるでしょう。

そんなどうなるかもわからないことを気にしても仕様がない、と思われるかもしれません。けれど、過去の「業」が今に繋がり、今の「業」が将来に影響していくことは間違いありません。ならば、決して変えることできないこれまでの「業」を悔やんでばかりいるのではなく、これから自分がどう行動していくかをしっかり考えなければならないのだと思います。その時に、今さえ良ければ、自分さえ良ければ、というスタンスで行動するのか、あるいは怠惰に流されないように努めるのかで、結果はきっと変わってくるでしょうし、それによって、過去の失敗がプラスに転ぜられていくこともあるはずです。

私自身、怠惰に流されやすく、その場しのぎでなんとかなる、と思いがちな人間です。けれど、それではいけないんだなということを、この「業」ということを考え始めてようやく気づきました。このことをしっかりと自身の行動の指針としていかなければと思います。
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