「いただきます」

もう1年くらい前の話です。

 私は、東京へと向かう新幹線の中で、昼食のサンドイッチをパソコンを片手にモグモグしていました。

そんな時、ふと私の席から通路を挟んだ席で、背筋をピンと伸ばした男の子が目に入りました。

 よく見てみると、彼は目の前のお弁当に両手を合せて、ゆっくりと丁寧に丁寧に頭を下げていました。

 私はその美しい仕草に見とれてしまいしました。

 そして、なんだか自分が恥ずかしくなって、パソコンへ向かっていた手を止めて「いただきます」と小さな声で手を合わせ直したことを覚えています。

  

それまでの私にとって「いただきます」はなんとなくの癖になってしまっていました。

 言わなきゃいけないから言うものであって、「いただきます」の意味なんていちいち考えられていませんでした。

 しかし、新幹線の中で出会った彼は、癖としてではなく、お弁当の中の「いのち」に向かい合い手を合わせていたように私は思えました。

 

それから、出来る限り「いただきます」を言う時は、少しでも目の前のいのちへ想いを寄せられるように手を合わせ、「いただきます」と言うようになりました。

すると、なんとも言葉で言いようがないのですが、ご飯をいただく時の気持ちがなんだか違うのです。

 手を合わせて頭を下げるその時間のお陰で、普段はあまり考えることのできない「いのち」について想う時間をいただいたのでした。

 そして、その時間は私の心を豊かにしてくれる時間でもあります。

 新幹線の中で見知らぬ男の子に教えてもらった、小さいけれど、大きい出来事ことでした。

 

 


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