彼と彼女の決断


先日、友人の結婚披露宴に出席してきた。
お寺同士の結婚、僧侶同士の結婚で、新婦にあたる友人はお婿さんを迎える跡取り娘であり、つまりは私と全く同じ形態の結婚ということになる。

そして、同じテーブルで私の隣に座った友人もまた、お婿さんを迎えたお寺の跡取り娘だった。

だが、私と今回の新婦の結婚と、彼女の結婚との大きな違いは、彼女のお婿さんがお寺の出身ではないサラリーマンであったこと。
その違いは、私からしてみたら異星人との遭遇並みにハードルの高い結婚の形態だった。
 

そんな稀なるご縁に出会えるほどの友人の魅力もさることながら、彼女と出会い僧侶となった旦那さんの決断もまた驚愕に値すると、当時は思ったものである。

たぶん、周囲からは私と同じような反応をされ続けていたのだろう。
彼女の旦那さんは自らの結婚披露宴後の二次会で、こんな言葉を挨拶と共に述べた。

「皆さんは、私が結婚し、仏門に入り僧侶となることを告げると、凄い決断をしたと驚かれます。
 しかし、新婦はその10年も前に、今の私と同じ決断をしているのです」

跡取りとして、そして女性として悩むことも多かったはず。
でも彼女は若くして決断した。
その彼女をこれからは自分が支えて行きたいと言って、旦那さんは挨拶を締めくくった。

自分の決断は凄くはないのだと、一方向からしか見られなかった私の上っ面な思いを見事に打破してくれた言葉だった。

【彼の決断】と【彼女の決断】

どちらが重いとか軽いとか、そういう物差しで測るものではないけれど、きっと、それぞれが、それぞれに、思うところはあっただろう。
それでも、同じ決断を共有することのできる、ただ1人の人と出逢えた彼女の顔に、あの時と変わらぬ微笑があることが何よりの幸いだと思った。

どんな結婚にも、大なり小なり決断は伴うものだ。
招待された今回の結婚にも、想像以上の重い決断が伴っていた。
そして、私の結婚にも、互いを傷つけ合いながら、涙と共に下した決断があった。

相手にとって、私はその決断に見合うだけの存在でいられているのか、久しぶりに自問自答する機会を得たように思う。

この世は無常だ。
あのときと同じ心を持ち続けることは叶わない。
だが、無常であることを言い訳にして、仕方がないと割り切ることのできない自分がいるならば、それを相手に強いるのは筋違いだろう。
分かってはいる……分かってはいるが……(苦笑)

だからどうか高砂に座る二人には、無常に移ろいゆくことを共に楽しみながら、変わりゆくことのできる尊さへの気付きに溢れる日々を過ごして欲しいと、私にとっては世界征服くらい壮大な願いを抱いてみたりした。

ちなみに、隣に座る友人に、旦那さんの結婚時の言葉を話してみたら、全く覚えていないとのこと。
あっけらかんと笑う彼女の気性もまた、愛すべき魅力の一つだと思っている。
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