夏の読書感想文

 
致命的なほど決断力がなく、自己決定権を放棄するほどの依存度の高さを持つ私を心配して、友人があるマンガを貸してくれた。

     
 
『賭博破戒録 カイジ』 (福本伸行・ヤングマガジンコミックス)


思わず「なんでやねん!?」とツッコミを入れたのだが、読んでみるとそこには本当に絵に描いたような転落人生が描かれていた。
 
借金を背負わされ、返済のため命がけのギャンブルをし勝利するも、また借金を背負い、また命がけのギャンブルを繰り返す主人公。
ただの救いようのない人物のようにも見える。
だが、騙し騙され、目を背けたくなるほどの酷い目にも痛い目にも遭いながら、それでも彼は人を信じ、人を助けることを諦めない。
賭けに勝つことなど不可能な状況で、自分と仲間が助かるために、頭を使う。
 
内容があまりに極限過ぎて、自分とは全く無関係の話に思えるが、奈落へと落ちてゆく主人公の姿に、誘惑に対する人間の意志の弱さというものが、気持ち悪いほどリアルに描かれていた。
 
 
「【明日から頑張ろう】という発想からは…どんな芽も吹きはしない」
「明日から頑張るんじゃない…今日だけ頑張るんだ」
「今日を頑張った者、今日を頑張り始めた者にのみ…明日が来るんだよ」
 
誘惑に抗えず、今日の分は明日頑張ればいいと、今日の楽を求める主人公。
それが泥沼に続く行為だと気付いた後も、誘惑には勝てず、「今日だけ」と思い、明日明日へと繰越しながら落ちてゆく、その姿を見ながら、ほくそ笑む者の言葉。
 
宗教者を含め、いろんな人が「今を大切に」「今を生きよ」と言う。
その言葉に、自分に「今」があることの素晴らしさに気づくのだが、やっぱり今だけに集中するのは不可能で、結局明日があるいう前提は捨てられない。
 
「今を生きよ」という言葉に触れた、その瞬間の「今」だけを意識し特別視するだけで、次の瞬間の「今」には目を向けず、遠くの「今」になるであろう未来を見据えている。
 
「明日から頑張ろう」と言って、今日を楽したツケを、あるという確証もない明日を信じて、先延ばしにする。
ツケの大小は様々だけど、多くがそういう感覚で、「今」を生きている。
 
今日のための今日ではなく。
明日のための今日でもなく。
今日のための明日がある。
 
こうして、大切にすべき「今」の、何が大切なのかを見失っていくような気がしてきたが、そうやってこの「今」の瞬間に何度も立ち止まり振り返り、「今」を支えるものについて考えることこそが大事なのだろうと思うことにした。
 
もっともこれは、「金がすべて」という、人間の醜悪な部分を、醜悪なまま描いた作品であり、主人公達の生き方に共感できるかは、別の話。
それに、このマンガを通じて私に伝えたかったことも、そういうことじゃないはずだ。
 
自分で自分を窮地に追い込んでしまうような、どうしようもない主人公が、自分を信じ、自分の命を賭けた目を決める。
その究極の決断力を見習って、誰でも彼でも頼らず、自分の意思で決めることも大切だということを読み取るように…、ということだろう。
 
けど、いざという時は頼ってくれていいからと、言ってもらえたことを嬉しく思う。
こうして、私はまた決断を放棄して…落ちていくんだろう。 ざわざわwwww
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