傷だらけの人生。からの、恢復

 最近の私の周りでの会話のキーワードに、「支援者の支援」ということがあがってきます。
その中で、二次受傷という大事な概念があるといいます。

二次受傷とは、「外傷体験を負った人の話に耳を傾けることで生じる被害者と同様の外傷性ストレス反応」と定義されます。
大きく傷ついた被災者や被害者の話を聞くことで、聞いたほうも傷つくというもの。

症状としては、
「被害者の語りが繰り返し頭の中で再生される」
「クライエントが描写した外傷体験がフラッシュバックや悪夢として体験される」
「夜道を歩くのが怖くなり、小さな物音に敏感になる」
「家族の安全を極度に心配する」
「配偶者や恋人と親密な関係を維持できなくなる」
「支援者としての適性を疑うようになる」などなど。


どういう傷つき方をするか、には様々なものがあると思いますが、
自分の体験で言いますと、

「津波の話を聞いた後、夢の中で自分の体験として再現される」
「ご飯を食べられることや家族団らんでいることに罪悪感を感じる」
「無力感に苛まれ、いたたまれない」
「今、拠って立っている位置がわからなくなり、誰かにすがりたいと感じる」
「ささいな発言が自分への批判に思えてしまう」
「身近な人に対して攻撃的になる」
「繰り返し繰り返し、過去の夢を見る」

こんなことを繰り返しながら、家族や仲間や出会った人たちに支えられ、
そして徐々に慣れながら、今日があります。
二次受傷は、直接的に被害者に接していなくても、
たとえばテレビで震災のシーンを見るなどでも起こり得る現象。

何もできない自分、に傷ついている場合もあります。
被災地に行ったのに、その体験が伝わらないことに傷つく場合もあります。
地域での人と人の温度差に傷つくことも多いです。

皆さんにも、ああそういえば、という経験があるかもしれませんよね。

二次受傷は、起こるか起こらないかではなく、必ず起こることであり、いつ起こるかの問題なのだそうです。

予防のためには準備とサポートとバランスが大事、とのこと。
「準備」は、自分のトラウマや未処理の問題を解決しておくこと。
「サポート」は、なかまや先輩。
「バランス」は、深刻な相談を受けすぎずコントロールし私生活を充実させる、など。

でもこの予防法というのは、専門家じゃなかったら、難しいかもしれません。
当事者でありながら支援者側のこともしている立場の人もたくさんいます。
自分の生活課題を抱えながら、支援している人は本当にしんどいと思います。

震災では、たくさんのボランティアさんが関わります。
専門知識も予備知識も訓練も先輩もない状態で傷だらけ、ということになっているのが、現状ではないでしょうか。

結局のところ、「ああ今、傷ついたなぁ」と認めるところから始めるしかないのだと感じています。
傷ついた自分を「いつまでもこんなんじゃダメだ」とか「当事者でもないのにこんなことではダメだ!」などと責める必要はなく、または「どうしてわかってくれないんだ!」と怒りに任せるのでもなく、誰かや何かのせいにするのでもなく。


受けた傷は、放置せず美味しいものを食べたり、音楽を聴いたり、友達とおしゃべりしたり、そうやって少しずつ和らげていくと良いそうです。

支援活動や社会活動に関わる事が、傷の恢復であるのかもしれません。
それでもいいかもしれません。
でもその場合は、それが自分自身のためである、と自覚することが大事だと思います。


いろんな恢復の仕方をしているのです、きっと誰もが。
そして、そう思えば、多少のズレも許せるようになる気がします。


あの3・11から2年5か月を迎えようとしています。
今でも、大きく深く傷つき続けている人たちがいます。
そこからの恢復は時間がかかることでしょう。
新たな傷も受けるでしょう。
共にいる人たちも二次受傷をしつづけていくのでしょう。


でもたぶん、ひとはそういうことを繰り返し繰り返し、そこから得るものを糧にして智恵にしてきました。
その結集のひとつが、宗教ではないか、と思います。

仏教である浄土真宗では、阿弥陀如来という仏様のことをお伝えしています。

諸刃の剣を持った傷だらけの私たちを、そのまま救うと抱き留めてくださる。
もう、傷つかなくても傷つけなくてもよい世界を準備していてくださる。
生きていくうえで避けられない傷が恢復していくのを見守り、待っていてくださる。
本当の「寄り添う」とはそういうことなのではないかな。

そういう仏様なんだなぁ、と改めて考えた次第です。 
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