1月の読書感想文『ブラジル蝶の謎』
- 2016年01月16日(土) 文:sakulla
- 仏声人語
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去年頃から、私が学生時代に読み漁っていたマンガや小説が立て続けに実写化されるようになった。
今月スタートの連ドラ「犯罪学者 火村英生の推理」もその一つ。 (http://www.ntv.co.jp/himura/)
原作は有栖川有栖の推理小説。
内容は作者と同姓同名の推理作家が登場し、彼の友人である犯罪社会学者・火村英生のフィールドワークに助手と称して同行するのが定番の展開。
二人の行き先はほぼ殺人事件の現場であり、状況や関係者の話などを含め、物語はすべて推理作家の一人称で進められていく。
そして、これは長編に限るのだが、事件におけるすべての情報が提示されたところで「読者への挑戦」が出されるのが有栖川作品の最大の特徴だろう。
要は「犯人とトリックを当ててごらん」という作者からの挑発である。
しかし、私はその挑発に乗ったことがない。
基本的に小説を読むときは、登場人物の言動や思考・セリフなどに興味の比重を置いているため、情報をまとめたり先を予測しながら読むことがないためだ。
だから犯人は誰でもいいし、トリックをネタバレされても全く気にならないという「推理小説好き」を称するに値しない嗜好の持ち主なのである。
ならば、この作品のどこに琴線の触れる部分があったのか。
一つ挙げるならば、『ブラジル蝶の謎』に収録されている短編『蝶々ははばたく』で触れられた「バタフライ効果」に関する記述である。
バタフライ効果とは、気象学者エドワード・ローレンツの「ブラジルの1匹の蝶のはばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?」という言葉が元にあり、小説内の説明を引用すると「不確定性に満ちた予測不可能な事象を研究対象とするカオス理論の入門書の冒頭で紹介され」「始まりのわずかな違いが事態の展開の中でどんどん大きな差異に拡大していくという『初期値に対する鋭敏な依存性』のこと」らしい。
本当に些細なことが様々な要因を引き起こし、だんだんと大きな現象へと変化する可能性を説くバタフライ効果に、当時仏教学部生だった私はある網の話を思い出した。
その網とは仏教の守護神の帝釈天のお城を覆っている、網目一つ一つに宝石が散りばめられた、それは綺麗な因陀羅網(いんだらもう)という網のこと。
法話で言うなら、その網目一つ一つを私たちに例え、それぞれが輝き、それぞれがそれぞれを輝かせている世界を話すだろう。
そして一つの網目を揺らせば、その揺れが網を伝って全体に大きく広がっていくように、どんなに小さなことであろうと、その影響は必ず出てくることも説く。
時には思いがけず大きな反響が起きることもあるだろう。
そうやって、私たちは網のような見えない縁によってつながり合っている。
遠く無関係にあると思うようなことでも、必ずつながり合い影響しあっている。
この世界に自分と無関係なものなど何一つないということだ。
しかし、当然ながらこの小説はそうは繋がらなかった。
蝶々のはばたきが遠くの気象を変動させるならば、逆に大きな気象の変動によっては遠くの蝶々をはばたかせるのではないかと。
この時、阪神淡路大震災の傷跡がまだ生々しかった頃だった。
「神がどんな無慈悲な仕打ちを行おうとも、どこかで蝶々ははばたくのだ、と私は思いたかった。嵐が吹き荒れてしまったのなら、せめてせめて、蝶々がはばたくがいい」
あの火の海を、あの津波を、私は映像でしか知らない。
けれど、因達羅の網の先にはあの震災が確かにあり、私を取り巻くすべてを大きく揺らしていた。
だからこそ思う。
遠くでなくていい。
どうかあの場で無数の蝶々がはばたいて欲しい。
この短編を読み、その様を想像しながら切に願ったのを覚えている。
あとは………えーっと、ストーリーもトリックも面白いと思う。
それから、火村の犯罪に対する姿勢とか、なかなか明かされない過去とかも…。
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